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さらに車内からふと店内を覗くと、店員の姿も見えない。
記者としての習性からか、異変を感じた加藤は車を降り再度店内へ。
入ってみるとやはり店員の姿はなく、静かに流れている店内BGMがはっきり聞き取れる。
「誰もいないのか…?」
そう呟き歩みを進めた時だった。
何かが加藤の足首を強く掴み、加藤はすぐにそれを見た。
「!?」
それはうつ伏せに倒れた店員だったが、その顔は涙と鼻水で濡れており、さらにその背中には先ほどの酔っ払いと思われる人間が顔をうずめている。
「助けてくれ!!」
突如叫んだ店員に、加藤が驚いた次の瞬間だった。
同時に背中の酔っ払いが顔を上げるやいなや、店員の背中に歯をたて食らいついくと店員は金きり声にも似た悲鳴を上げ、上体を大きく反らした。
“異常だ”
目の前の光景に対し、素直にそう感じた。
異常者は店員の背中に食らいついたまま離れない。
焦る加藤はとっさに異常者につかみかかった。
「おいアンタ!」
すると、加藤は我が目を疑った。
なんと異常者が店員の背中の肉を噛みちぎり、咀嚼しはじめたのだ。泣き叫ぶ店員。
そして異常者はその顔を加藤に向けた。
口から血液混じりの唾液を垂らした、その顔は生気が感じられないほど青白く、目からは出血が見受けられたが表情自体はどこかニヤついている。
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