未知の領域

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「そういえば巴、今日はなんで髪、結んでないの?暑くない?」 ふいに、聡美がそう問いかけてきた。 どきっとした。 なんでって…。 「あ、うん。ちょっと朝寝坊しちゃって」 時間がなかった、わけじゃない。ただ単に… 上手に結べなかったんだよ…! 鏡みながら後ろ手によくできるよな、あれ。 頭あまりにぼさぼさになるから、巴にやってもらおうと思ったんだけど、巴は巴で一生懸命俺の学校の準備してたから頼めなかったんだ。 いつも、巴は、肩下までの髪をひとつに結ぶか、上にあげるかしてる。 滅多におろしてない。 暑いから、らしい。 確かに暑い。 真夏じゃなくてよかった。 今は五月。 少し蒸すけど、まぁ、ましな方だ。 小さいころは、それこそ俺もおかっぱにされたりして。同じ服きた写真がたくさんある。 あのころはまだ似てたから。 今の俺は、髪、ムースで立てたりしてたんだけど、やっぱり巴にはできなかったようだ。 泳ぐときはもちろん落としてたから、まぁ、…しょうがねぇよな。 「あ、そういえば今日の現国、宿題してきた?」 ふいに聡美がそんなことをいったから、どきっとした。 聞いてねぇ! 「えっと…」 口ごもれば、 「何か今日、変だよ?巴。どっか具合悪い?ま、とりあえず教室いって座ろうか」 聡美は、心配そうにそういって俺の腕をつかんだ。
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