誰か夢だと言ってくれ

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しばらく黙っていた巴は、おもむろに口を開いた。 「…お兄ちゃん。ピアノのコンテスト…だめでもいいから出て?私もできるだけ水泳頑張るし。…それに…私、皆勤賞とりたいし」 …。 この負けず嫌いがぁっ! 母さんの言葉で感動したのに、巴の言葉で一気に気分がオチた俺は、 「だって!お兄ちゃん頑張ってたの知ってるもん。毎日練習して、毎日頑張ってたじゃん!…もしかしたら途中で元に戻るかもしれないでしょ?だから、それまで頑張る。お兄ちゃん頑張るの、私ずっと見てたんだから!」 続いた巴の言葉にちょっと感動した。 …。 だけど… 「…たぶんだけど、体が覚えてるだろうから勘で俺もお前も何とかなるとこはあると、思う。だけど、経験とかそういうのはなくなるわけだから…」 たぶん俺もお前も「自分たち以上の」成績は残せない。 「そんなのやってみなきゃわかんないじゃん!頑張ろうよ!」 なんでそんなに燃えてんだ、お前は。 「病院なんかいって頭のおかしい子扱いされて、しかもどうしようもないですねーなんて帰らされるのもういやだもん」 …原因わかんないことは流されるからなぁ。 巴は昔、原因不明の病気でいつも具合悪くて。 だけど原因つかめなくて、気持ちの問題だなんていわれたことがあったからそれを思い出してるんだろうと思う。 うつむいて手を握り締めてる。 「…わかったよ。…兄ちゃんも頑張る。…でもあんま期待すんなよ。…母さん、とりあえず、今日は普通に学校いってみるよ。…で、どうするか考えてみる」 まずは一日。 俺こと永沢拓也は、永沢巴として。 巴は永沢拓也として。 それぞれの学校に向かうことになった…
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