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その夜、夢を見た―――。
夢の中……霞み行く景色の中で、私が確かに見たのは……幸せに満ちた表情をする私と―――不動、幸人?
あっ!!
「由美奈ー。起きなさーい!もう朝よー。」
……一階から聞こえてきたお母さんの声で、睡眠不足の余韻を感じながら、私はゆっくりと現実世界に戻ってきた。
視界が滲む。天井が歪んで見える……あれ……
私、泣いてるんだ………
楽しい夢だった気がする……のに、私は涙を流していた。
……でも、そんなことより気になることが。
「私は―――夢の中で、あの人に会っていた……?」
ちょうど、一年ぐらい前。
さっきと同じ夢を見るようになったのは―――
今までは……夢に出てくるその人は、誰だか分からなかった。でも、今ハッキリと分かった。あれは、不動幸人だった……
知ってると思ったのは、このせいだったんだ………
何がなんだか分からない。
……この時はまだ、この涙の意味も、分かるはずがなかった……
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