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◆
「閖本 由美奈、か…」
一日が後数分で終わる時刻。
一人きりの部屋でつぶやいた彼女の名前は、静まり返る部屋の片隅に溶けて消えた。
目の前で死なれそうになったのには驚いたけど…
でも、まずは今日あの子に会えたことを嬉しく思おう。
≪アイツ≫のための花がぐしゃぐしゃになったのはちょっと頂けなかったけど…ま、事情が事情だ。≪アイツ≫も許してくれるだろう。
さあ、明日は少し早めに起きたい。もうそろそろ寝ようか…。
………。
なぁ、由美奈。
オレは、この日のこと、きっとずっと忘れないよ。
君がいるこの世界が
君と会えた、奇跡が
君が見せた、笑顔が
灰色だったこの世界に再び、色を与えたんだから。
オレは……不動 幸人はこの日誓ったんだよ。
あの頃の想いを、取り戻すって―――。
それが、たとえ誰を傷付けても、何を犠牲にしたとしても………
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