【始まりの時】

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……世間一般では、このような状況を運命とか表現するのだろうか。昨日、オレが命を救った少女が目の前にいる。オレに命を救われた少女が目の前にいる。……彼女は今どんな気分なのだろう?もう会うこともないだろうと思っていた命の恩人に再会した気分は、どんなものなのだろう…… ……一つ確かなことは、彼女がどんな風に感じていようと、この出会いは決して"偶然"とか"運命"といった類のものではないということだ。 ……オレは、君に会いに来たんだから。この町に、この学校に……君に会うために来たんだから。 「……なんだ?不動と閖本は知り合いか?」 「……まぁ、知り合いというか……」 「なんだ?彼女か?そーかぁ。不動は閖本を追ってうちの学校に来たのか。」 「…………」 ……青春学園ドラマじゃ有るまいし、そんなメルヘンチックな動機で転校したりしない。とりあえずあれだ。……オレはからかわれるのが苦手だ。 「あら……不動君……私のことそんな風に見てたの?でも、私たち昨日会ったばかりだし……その……」 ……閖本さん。出来れば真顔で照れたフリもせず淡々とそんなセリフを発するのは止めて頂きたい…… 「……誤解です、先生。事実と全く異なります。彼女とはまだ知り合ったばかりで……」 「ん?なんだなんだ?もう同棲してるのか?」 ……生まれて初めて人を太平洋に沈めたいと感じました。 「…………。」 「ん!?なんだ?黙ってるってことは本当にそーだったのか?先生ビックリだぞ!」 「もうえーわ!!」 !? オレこんなツッコミする人だったっけ!?
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