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「―――でさぁ、なんで幸人と閖本は知り合いなの?」
……午前の授業も無事乗り越え、迎えた昼休み。
オレの一つ前の席を生業とする落合涼(おちあいりょう)は、母親が丹精込めて作ってくれたんであろう弁当を突きながらそんなことを聞いてきた。
「……あぁ。閖本がトラックに轢かれそうになったのを、オレが助けたんだよ。」
「……それサラっということじゃなくね?すげー出会いだなおい。」
……確かに、ドラマのワンシーンのようなシチュエーションだな。あれにはオレも驚いた。
「てか幸人度胸あるなー。俺だったら尻込みしてトラックの目の前飛び込むなんて無理だな~……」
「……そんな褒められたもんじゃないよ。咄嗟に体が動いただけさ。」
初対面の人間に対し、下の名で呼び捨てにすることの方が、オレから見たらよっぽど度胸のいることだ。
……朝のホームルーム後。真っ先にオレに話し掛けてくれたのは紛れも無く落合涼であり、『幸人って呼んでいい?あ、俺のことは涼でいいから!』と、違和感無く下の名で呼び合える環境を作った彼は、理屈っぽいオレには無い良さを持っているし、それが羨ましくも感じた。
「いやいや。相手トラックだぞ?その体が咄嗟に動くのが凄いんだって!……あ、」
「まぁ確かに、落合じゃ絶対無理よね~。あ、から揚げおいしー♪」
……突然現れたかと思うと、涼の弁当箱からから揚げをつまみ、口に運びながらそんなことを言った一人の女性。
「おい、流川。俺のから揚げだってそんくらいできる。」
「言いたいことは解るけど、混ざってるわよ?」
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