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―――どうなったんだろう。
落ち着いて考えよう。
とりあえず意識はある。ということは、死んだ訳じゃないのかな。それともここはもう死後の世界?
……空が見える。でも、青空じゃない。
雨が降っている。買ったばかりのお気に入りの傘はどこに行ったんだろうか。少なくとも、視界には入らない。
……空が見えるということは、私は仰向けに倒れているんだろう。顔に当たる雨が、妙に鬱陶しい。
体が痛い。
当たり前か、トラックに跳ねられたんだから。さっきから、トラックの運転手が、何か怒鳴っている。……被害者は、私なのになぁ。
周りには、沢山の人が群がっているんだろう。ドラマの効果音のようなざわざわという音と声が耳に入ってくる。
かなり衝撃的な光景だったはずだ、無理もないかな。
右手を動かそうとする。でも動かない。左手も一緒。
足は…かろうじて動く気がする。でも、とても立ち上がることは出来なそうなくらい、体が重い。
…ふと、自分の体に違和感を覚えた。
確かに体が重い。でも、体中が痛かったり、血の滲み出る生暖かい感じはしない。…物理的に、上から何かが覆いかぶさっている感触がする。
「今度は、助けられたな―――」
私に覆いかぶさる何かは、そんなことを言った。
……なるほど、手が動かないのも体が重いのも、私の上に誰かが覆いかぶさってるからか。となると、轢かれる寸前に通りすがりの誰かが自分の身を挺して美少女(私)を庇ってくれたと考えるのが妥当かな。
声のトーンからして、女性ではないと思う。年配の方にしては張りのある声だし、冴えない中年男性の働き疲れた声にも聞こえなかった。
二十歳そこそこ…いや、もっと若いかな。案外、私と同じ歳くらいの男子高校生かもしれない。
なんにせよ…
………私の胸、思いっ切りこの人に当たってるんですけど。
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