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ある日、俺はお前の元に小さな鈴の付いたリボンを持って行った。
そしてお前を抱いて、その首にゆっくりとそれを結んだ。
「お前が俺のって印…なんてな♪嫌だったら外せよ」
本当はこんな事はするべきではないのかもしれない。
わざわざ外せるような物にしたのも俺のエゴだ。
お前の意思を尊重したふりの単なる目くらまし。
本当は責任を負うことの出来ない俺の荷をお前に押し付けているだけ。
俺はお前がこれを外さないと知っている。
ゆえにたとえ自分で外せるような物だとしてもこれは立派な鎖だ。
自由なお前を縛ってしまう鎖。
だが…そうだとしても、俺はお前を俺のものにしておきたかった。
どんなに汚いやり方だとしても、俺にはそうする他なかった。
「そういえばお前名前なかったなぁ…うん…鈴夜…鈴みたいに綺麗に鳴いて夜みたいに黒いからな!よし、鈴夜!決まり!」
鈴夜、お前の名前。
本当は野良猫に名前など必要ない。
これも、お前を俺のものとするための一種の見えない鎖。
お前は笑う。綺麗に鳴きながら。首の銀色を自慢げに鳴らして。
余りにも純粋に…俺に笑いかける。
でも鈴夜…俺はお前の考えているような奴じゃないんだ…。
俺は俺に都合のいいようにお前を奪っているんだ。
ごめんな…。
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