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父が仕事から帰ってくると、リビングのソファで呑気に丸くなっているケンシンを囲み家族会議が始まった。
「きっとさ。アレだよ、アレ。首輪がなかったから、誰かが悪戯で付けたのかもしれないよ」
長い沈黙の後、むくれる私をなだめるように何となく思いついた事を言う。
そういう時は決まって『きっとさ。アレだよ、アレ・・・』と前振りをするんだ。
本人は気付いていないようなんだけど、こっちはお見通しなんだから。
「またお父さん、適当なこと言って逃げる気でしょ?」
「そうねぇ。私もお父さんの意見は違うと思うわ」
珍しく母と意見が合い、ショボンとする父とは反対に嬉しく思った。
「絶対、余所で飼われることになったんだわ!」
「ハァ~?」
喜んだのも束の間。
母は両手を握り締め、力強く自分の考えを口にした。
こういう姿勢の真知子さんは自分の意見を絶対に譲らないんだ。
例えそれが世間から遠く離れた考えだとしても、どういう訳か自分の意見を主張する。
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