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――猫の魔法――
「あ、優子? 佐代子ちゃん来たわよ」
電話の相手は台所にいる母だった。
「知ってるわよ。メール来たから」
「あら、そう」
母の早苗(さなえ)は同じ家の中にいても携帯電話を使う。大声で呼ぶより楽だからと本人は言っている。
川田家は5人家族。父の健太郎、母の早苗、中学二年生の孝太郎と高校二年生の優子。そして猫のタマ。
タマは三年前に父が拾って来た。タマという名前も父が付けた。
「ネコと言えばタマだろ」
この父の一言で決まった。
タマ自身がその名前を気に入っているかどうかはわからないが、名前を呼ぶと気が向いた時だけ「ニャア」と返事をしてのそのそとやって来る。一家の主である健太郎よりも我が物顔で家の中をフラフラしている。
天気の良い日は玄関先に寝転がっている。
夜は優子の布団の中に潜り込んできて眠る。
タマは猫の中ではかなりのイケメンの部類に入るのではないかと優子は常々思っている。
全身真っ白でスリムな体系。目は鋭く、鼻筋は真っ直ぐ通っている。
弟の孝太郎は「猫なんてみんな同じ顔じゃないか」と呆れた風に言っている。
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