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栄史と一哉
【出逢い】
ごく普通の高校に入った。
勉強なんて何処もやることは一緒。
頭が良ければ親の会社は引き継げる。
勉強が足らなければ自分で勝手にすればいい。
だから高校なんて何処でも良かった。
俺は周りの人間と馴れ合うなんてゴメンだ。
ここ一ヶ月俺は誰とも必要以上に会話を交わしていない。
俺自身の雰囲気が周りと違うのか誰も一切話し掛けては来ない。
俺はそれで心地よかった。
それで良かった。
でも……
「えっとぉ……高月君?」
高校に入って初めて俺に話し掛けて来た奴がいた。
窓に有った目線はその声の人物へと向けられる。
「へへ、当たり。」
それが如月栄史だった。
第一印象は子供っぽい。
童顔でデカイ目の二重、茶色の男にしては少し長い髪。
声は高くも低くもなく…
背もさほどでかくないから尚更子供に見えた。
「僕如月栄史。高月君ってさ、保険委員だったよね?」
何一つ返事を返さないのに勝手に話しを進めていく栄史。
俺は座っている為見上げ、真っ直ぐ相手を見つめ小さく頷く。
「良かった、あのね?僕…」
ヘラっと笑い自分の右手を上げる。
それに自然と目が行き見ると俺は驚いた。
「手ぇ切っちゃってさぁ、アハハ~どぉすれば良いかな?」
それは切っちゃってのレベルじゃなかった。
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