31人が本棚に入れています
本棚に追加
一一ジャンモの森
閖雅(ゆりまさ)は眩しい光りと共に再びこの世界に戻ってきた。
たった2ヶ月間しかこの世界から離れていなかったのに、もっと長く離れていたような感覚に陥る。
元々居た世界ではお昼だったが、この世界では夜だった。
鳥:「ギィシャーッ!!」
閖雅:「うわっ!?」
久し振りに聞くその囀りに閖雅はビクッと驚いてしまう。ドキドキと鼓動を打つ胸に手を当て、周囲を見回しながら歩いて行く。
彼の名は閖雅、十代半ばの年若い少年は年齢のわりに少しだけ幼さを残していた。
顔立ちはこの世界に初めて踏み込んだ時よりもオッドやクロス達との旅で顔立ちは大人っぽいものに変化していた。
彼は記憶を探るように道なき道をカサリカサリと掻き分けながらしながら前に進んでいく。
一一ガサガサガサガサガサガサッ
閖雅:「一一!!!?」
その時、物凄い勢いで草むらを掻き分けてこちらに何かが来るのが分かる。
閖雅はギョッとして、胸ポケットに手を差し込んだ。しかしそこにあった筈の白と金の背表紙をしたトランプがその場所には何故かなかった。
閖雅:「(えっ、うそっ…トランプが無い!?一一予想外なんだけどっ!)」
勢いは落ちることなく、閖雅に向かって突撃してくる。
閖雅は辺りを見回して、隠れる場所を探す。しかしそれは何処にもない。木があっても、登れなかった。
彼は覚悟を決めて、両腕を顔の前に交差して突撃されるかもしれない衝撃に備える。
一一ガサガサガサガサ…
ガサガサガサ……がばっ
草むらから何かが飛び出してくる気配がした。
閖雅:「(一一皆に会えないまま、僕は……)」
?:「一一ユリマサーッ」
閖雅:「一一へ?」
元気な声が、頭上から聞こえた。
閖雅は腕の隙間から声の主の方を見ようとして、腕の防御を解いた。
声の主はそのまま構えを解いた閖雅の上にのし掛かってきた。
ドシーンと閖雅は声の主に潰される。
閖雅:「一一うぷっ…ムムムム…」
閖雅の視界は真っ赤な服に覆われていて、とてもやわらかな何かが顔に押し当てられていた。
?:「あ、やっぱりそうだ。"うち"の聴覚は完璧だわ!」
身体を起こしてそう言う人物の顔を見て、閖雅は目を丸くする。
その人はボーイシュな髪型で茶髪だった。自分を見つめる瞳は青かった。赤いシャツに白いズボンを履いていた。
それは地属性の兎のアースで、本来の姿ではなく、人型だった。
最初のコメントを投稿しよう!