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「あら、ミンク。いらっしゃい」
明るく元気に出迎えてくれたのはラナ。店長の娘さんだ。
ボクより一つ年上の12歳。しっかり者の彼女は実際の歳より、少し上に見られる。
瞳と同じ色をした茶色い髪をポニーテールにして三角巾とエプロンをつけている。
まるでウェイトレスみたいだけど、これが店の制服らしい。
ラナはボクのことを名前で呼ぶ数少ない存在だ。
師匠なんて「おい!」とか「おまえ」としか呼ばない。
でもボクは名前にあまり思い入れはない。
ミンクは本当の名前じゃないんだ。
魔法使いは本当の名前「真の名前」があって、それは自分と名付けた人しか知らない。
これを知られると魔法使いは大変なことになるんだ。
だから誰かに「ミンク」って名前を呼ばれても、自分の事だと気がつかない時もある。
でもラナに呼ばれると、すごく自然に自分の事だと思える。
「ラナ、おはよう。薬を届けに来たんだ。」
ボクはカウンターに背負い袋を置いて中身を取り出しながら、師匠の事を報告した。
師匠がいないと、しばらくは高価な薬は作れない。
ボクが作れるのは頭痛薬や胃腸薬程度だから、重病の人には在庫で対応してもらわないといけない。
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