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Prologue
深い孤独の森。
人は皆、闇を恐れるけど、私にはとても馴染みのある闇。
とは言っても、私には心なんてないけれど……、たまにここがとても淋しい場所なのだと認識する。
……この胸の内にある違和感はなんなのだろう。
そういえば、こんな風になったのはあの人に初めて会った時からだ……私に名前がついたあの日。
「どうしたんだい?」
振り向くと黒づくめの格好をした紅い瞳のあの人が立っていた。
「……いえ、なんでもありません」
あの人はゆっくりと私の前まで近づいてきた。
「それより、どうなさったのですか?」
私は彼の顔を見る事が出来ず、顔を逸らした。
きっと、この人は気付いたはずだ。
「ああ、新しい子を連れてきたんだ♪行ってきてくれるかい?」
「了解しました」
私の仕事はここに堕とされた人間に、簡単に説明をして、より強い絶望を与える事。
私はすぐに行こうとしたのだが、この人に腕を掴まれた。
「……行けないのですが」
「さっき、何を考えていたの?」
この人は相変わらず、理解不能な事をする。
「……昔の事を思い出していたんです」
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