307人が本棚に入れています
本棚に追加
はぅぅぅ……。
僕は大きなため息をついた。まさかこんなに可哀想な人だっただなんて。僕にはこの子を救うだけの力がないというのか……。
「な、なんでありますかそのイタい子を見るような目は!?」
「はいはい、もう何も言うな。警察と評判の病院を薦めてあげるよ」
僕の親切かつ善意と真心の塊である提案を、テンはちょっぴり泣きそうな顔で否定する。
「頭はおかしくなんてないでありますっ! メモリーチップは最新式でありますっ! 隊長、現地の護衛対象に自分はいぢめられてるであります!」
すみません。メモリーチップ云々でもうついていけません。
脂汗を流しているのにも気づかないのか、テンは電波気味なことを次々と言ってくる。志穂よ、僕の部屋には絶対来ないでくれよ。頼むから。
「あのぅ、もしかして信じてもらってなかったりするでありますか?」
「うん、全然信じてないよ」
ガーンという擬音語が聞こえてきそうだ。
テンはがっくりと肩を落とし、右手の人差し指で『の』を大量生産している。これじゃあまるで僕が悪いみたいじゃないか。
「じゃあ、せめて僕の質問に答えて。返答しだいで信じてあげるから」
最初のコメントを投稿しよう!