第3章

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「もうっ、お兄ちゃーん! 何騒いでるのー?」 「──っ!」 思わず息をすることを忘れた。 マズい、ひたすらマズい。果てしなくマズい。なんてバッドなタイミングだ。 こんなところを志穂に見られたらいったいどうなることやら……兄としての尊厳とゆーか、そーゆーものがぁぁぁっ! 「お兄ちゃん、入るわよ……って、誰この人?」 扉を開けるなり、非難の目を向ける志穂。だが、次の瞬間には何かに納得したように手の平をポンと合わせた。 確信はないが、絶対ぇ勘違いしている。 部屋の中にいるのは取り乱して頭を抱える情けない兄(もちろん僕)と薄着の少女の2人。志穂が何を思ったかなど想像するのはたやすい。 「待つんだ志穂、とりあえず話を」 僕が言い終わるのを待とうともせず、志穂はクルリときびすを返して廊下を覗き込むと、 「お母ーさーん! お兄ちゃんが知らない女の子連れ込んで、不純異性交遊してるー!」 「してねぇぇぇぇぇぇっ!」 にやにや顔のテンが僕の肩を叩き慰めるように言う。 「人生はつらいことの連続であります」 いっそスクラップにしてやろうかと本気で思った。 *** 「おばさん、ありがとうございますであります」 「いいのいいの。ずっとウチに居てくれていいのよ」
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