307人が本棚に入れています
本棚に追加
「もうっ、お兄ちゃーん! 何騒いでるのー?」
「──っ!」
思わず息をすることを忘れた。
マズい、ひたすらマズい。果てしなくマズい。なんてバッドなタイミングだ。
こんなところを志穂に見られたらいったいどうなることやら……兄としての尊厳とゆーか、そーゆーものがぁぁぁっ!
「お兄ちゃん、入るわよ……って、誰この人?」
扉を開けるなり、非難の目を向ける志穂。だが、次の瞬間には何かに納得したように手の平をポンと合わせた。
確信はないが、絶対ぇ勘違いしている。
部屋の中にいるのは取り乱して頭を抱える情けない兄(もちろん僕)と薄着の少女の2人。志穂が何を思ったかなど想像するのはたやすい。
「待つんだ志穂、とりあえず話を」
僕が言い終わるのを待とうともせず、志穂はクルリときびすを返して廊下を覗き込むと、
「お母ーさーん! お兄ちゃんが知らない女の子連れ込んで、不純異性交遊してるー!」
「してねぇぇぇぇぇぇっ!」
にやにや顔のテンが僕の肩を叩き慰めるように言う。
「人生はつらいことの連続であります」
いっそスクラップにしてやろうかと本気で思った。
***
「おばさん、ありがとうございますであります」
「いいのいいの。ずっとウチに居てくれていいのよ」
最初のコメントを投稿しよう!