第3章

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「うむむ……」 こう言われては断ることなどできるわけがない。しかし、行きたくないのが本音である。さて、どうしたものやら。 僕がそうこう悩んでいると、サッと挙手をする者がいた。 「おばさん、自分が行くでありますっ!」 テンだ。しかも耳をパタパタさせながらお使いを引き受けやがったし。 母さんは、ぱぁっと表情を明るくするが、すぐさま元の悩ましげなものに戻る。 「でも、お客さんをお使いに出すのわね」 「いいであります。泊まらせてくれるお礼であります。あ、部屋は志郎殿と一緒で」 待て、いま一瞬ニヤって笑っただろ? 「じゃあ、頼んじゃおっかなぁ♪ よろしく。あ、ハイこれメモね」 息子が襲われそうですよ母さん。 意気揚々な母さんからメモを渡されたテンは、笑顔を絶やさぬまま振り返ると、 「でも道がわからないであります。だから志郎殿も一緒に行くであります」 本末転倒なことをヌケヌケと言いやがった。てゆーか、場所もわからないのによく引き受けたなぁ。GPSとかないのかよ。 「あるでありますが、この時間列には適応してないであります」 GPSの意味ねぇぇぇっ! 「でもさぁ、僕は行かないからね」
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