『葬式に猫』

3/10

31人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
そろりそろりと、廊下をゆっくりと徘徊する。誰も私の姿には気付いていないようだ。中の人物と言えば、両親と姉とお坊さん。今更ながらに私が死んだことをあの額縁から想起させる。 そこで思った。なんで死んだのだろうか……?私は死んだ理由を知らなかった。生前は確かに生きていても仕方ないっと幾度となく思ったが……。 そんなことを疑問に思いつつ、廊下から玄関に目を向けると、喪服姿の人達がぞろぞろと私の家に集まってくる。中には知っている人もいるし、知らない人もいた。 そんな人達に目を凝らしていると、私は思わず叫びだしそうになるような人物を発見してしまった。大きく目を見開き、唖然とその姿を見つめる。 中学生の時のクラスメートたちだった。あの頃とは全く変わってしまい、着飾った印象を与える。そんな彼らが何故私の家に訪れるかが不思議でたまらなかった。 思い出したのは、中学時代の壮絶ないじめ。彼らのグループが嫌がらせを毎日繰り返し、私を登校拒否に追い詰めたそんな奴らだった。 次第に胸の中が、ゾクゾクと怒りだつ。彼らの顔を見ただけで、私は吐き気を覚えるほど、気分が悪くなったし、自分の醜さに腹が立った。 私もいじめられる原因は知っていた。無口で、ブサイクで人と上手く関われない、不器用な人物だったからだ。 しかし、今となればそんなことはどうでもいい。あいつらがここに来ることに、怒りと疑問とで一杯だった。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加