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私の一軒家は、そう大きくないので、家の中は喪服姿の人達で一杯になった。私は廊下をゆっくりと歩いて、彼らが見える位置に移動する。
来訪者に頭を何度も下げる両親と姉。胸がズキズキと痛んだ。自分の葬式を目の当たりするなんて思ってもいなかったので、この現場は私にとって最も価値ある時間だった。
過去に考えたことがある。自分が愛する人を見つけて、結婚し、自分が先に亡くなったとき、彼は泣いているのだろうかって……。死んだ後は、そんな現場に立ち入ることができないので、このような疑問は、とても興味あるものだった。
しかし今、似たような場面が実現されている……。答えは泣いているのだ。憎ましき人物の死でも、来訪者は悲しむのだと……。浮かれて葬式に来る奴など存在しない。
葬式に来るからには、彼らなりの事情があり、それを元に悲しむべき事情が存在するのだと……。
「あっ!猫」
私の感慨を無視するかのように、誰かが言う。声の持ち主を探り、顔を上げると、姉だった。目元を腫らし、とても血行が良いとは言い難い、やつれた姿だった。
彼女が私に手を伸ばし、顎の下をゆっくりとさする。私は気持ち良くて、横になっていた。そんな私を見て、人が集まってくる。三、四人が上から見下ろし、中腰で私の姿を見つめていた。
「可愛いなぁ……猫ってさ、誰からも理由なく好かれたり、嫌われたりするよね」
姉がポツリと言った言葉が、とても興味深いものだった。
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