《意見屋》

我慢派 我儘派

おや？いらっしゃい。
前に来た人だね。
たしか…名前…は…？

あ、そうそう。その良い名前のね。
今日は外が晴れてるみたいだね。いやぁこの店 どうも日当たりが悪くてね。
晴れてるか曇りか雨かはお客様の表情とか服装で見分けるようにしてるんだよ。

まぁさすがに雨の日くらいは雨音で分かるがね。
おおっとお客様は立ちっぱなしにしてしまったね。
さあその席に座ってくれ。

今日は飲み物をご馳走するよ。
コーヒーと紅茶とホットミルクを用意出来るがどれが良いかい？

かしこまりました。
でも、今日はバナナジュースを飲んで貰うよ。

そんな「え？」って顔しないでくれよ。
そんな「じゃあどれが良いかい？なんて聞くな！」って顔しないでくれよ。
はっはっは
バナナジュースは今日だけだ。
どうしても私は君とバナナジュースを飲みながら話をしたいんだ。

なぜかって？そのうち分かるよ。

―…‥ｺﾄﾝ
さあ飲んでくれ。
今日は…そうだなぁちょっと深い話しでもしてみようか。
なぁんちゃって！
深い話しはまた今度 時間がある時にしようか。

ん？深い話しもちょっと今してみたいって？
はっはっは
今度にしてくれよ。
なんでも自分が好きなようにはならないんだ
今日みたいにだ

私は大抵 自分の思い通りにならない時は 我慢をする

だが本当にそれで良いのか、と思うこともある。
何せ意見屋だ。
我慢ばっかりして自分の意見を言わないなんてありえない。そうだろ？
流されても良い。自分の意見を言うことが大切なんだ。

今まで我慢してきた私が言うんだ信じてくれよ？
もし君が私と同じ【我慢する側】の人間だったらの話だけど

はっはっは だからといって我が儘にはならないでほしいな。
我慢する側が増えるから

君はどっち側なんだい？
我慢か 我が儘か

意見屋か

そうかい 私は君が何を答えてもこう言うつもりだった。

意見を聞かせてくれてありがとう。

また来ると良いよ。ちゃんと聞くからね。

‥…―ｶﾗﾝ
　ザーザー…
　　ザーザー…
沢山のバナナの皮で出来た傘が僕の手に握られていた。