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 思わず受話器を取り落とし、私は絶句しました。  妹が。  また、同じ学校に。  十秒もほうけていたでしょうか。床に転がった受話器が「ねえさま、ねえさま?」と呼び掛けるので我に返り、震える手で拾って耳にあてました。妹はひとしきりはしゃぎ、泣きながら笑い、また一緒よ、と、恐ろしい事をさも幸せな事のように言いました。  私は声を搾り出し、何とかお祝いだけ一言告げて切りました。切る間際、妹は「近いうちにそちらへ行くわ。住まいを決めなきゃいけないし、ねえさまにも会いたいし」と言っていました。  私は愕然として、電話の前でつっ立っていました。  ――適当に優しくしておけば、あの子にもっと好かれるわ。  ――妹目当ての人々の、偽りの友好。  ――踏台。 今までの忌まわしい記憶が、次々に頭を巡ります。鼓動が薄い胸に響き、目の前が真っ暗になって。  気付くと私は裸足のままで、住まいからほど近い、廃ビルの屋上にいました。そうしてコンクリートの地面に向かい、吸い込まれるように身を投げたのです。
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