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「好きだった……伝えられなかった……もう会えないのに……」
嗚咽を漏らしながら、ゆきが僕を一層強く抱きしめる。
大きく報道される遠くの誰かの死よりも、ほんの小さな記事で扱われた人間の死を、こうやって心から悼んでいる人は、いったい何人いるのだろう。
報道すらされない死を、強く悲しんでいる人の涙は、一日でどれくらい、流れているんだろう。
僕が経験したことのない、悲しみで張り裂けそうな思いをしたことがある人は、世の中にどれくらいいるんだろう。
ゆきのしゃくりあげるような泣き声を耳元に感じながら、そんなことを考えていた。
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