別れ

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「ほたる……鳴いた?」 ゆきが驚いたように、僕を見る。 そうだよ、鳴いたよ。 聞こえた? たとえこうしても僕の気持ちが伝わっていないことは、百も承知さ。 だけど、僕はこの鳴き声に、きちんと思いを全部詰め込んで、それはもう溢れるんじゃないかってくらいに、愛情も後悔も感謝もすべて詰め込んで、鳴いたんだよ。 実は人間であることなんて、なんで僕は頑なに守ろうとしたんだろう。 ゆきに思いを伝える以外に、大切なことなんて何もなかったはずなのに。 好きだよ。 それだけ言えたら、僕の名前の記憶なんて、どうなってもよかったのに。
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