別れ

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気持ちは伝わっていないけど、ほたるが鳴いたことでしばし驚いて固まったあと、安堵したように笑顔をこぼすゆきを見て、人間の頃の記憶を守るために鳴かずにいたときの何倍も、自分の行動に納得することが出来た。 僕は、思いを音に出来たことと、ゆきの安堵した表情に達成感と安心感の入り混じった気持ちを覚えながら、葬儀で見てきた自分の体を思い浮かべた。 さようなら、僕。 記憶の中で目を閉じて眠っている僕の体に、そう別れを告げた。
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