出会った事情

8/9
前へ
/60ページ
次へ
12月 年末とあって、社内は忙しい。 あと少しで社員全員に7日間の休みが与えられる。 そんな忙しいなか俺は一人、仕事とは関係ないことを考えていた。 あのキス事件から8ヶ月近くが過ぎようとしていた。 だが、あの日から浜松の俺を見る視線は変わっていた。 どう変わったかは説明できないが、とにかく、変わっていたのだ。 だから俺は、告白した。 その年最後の出勤日に。 彼を会社内にある喫茶店に呼び出して、こう言った。 『浜松? 俺と付き合ってみないか?』 普通の告白。 ごく一般的な人間なら、体験したことがあるだろう告白。 だが、俺と浜松は――男。 そこが普通とは少しだけ、異なっていた。 『返事は来期になってからくれ。』 それだけ言って、代金を払い、俺は喫茶店を出た。 .
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!

647人が本棚に入れています
本棚に追加