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桜が蕾を付け始める暖かな初春。
とある豪邸の玄関内に一人の執事と一人の少年の姿があった。
一般家庭の部屋がすっぽり入るであろう広さがあるお陰で、二人がやけに小さく見える。
吹き抜けになっている天井からは日の光が惜しみなく注がれており、日が昇ったばかりの朝だとゆうのに昼間ほども明るい。
贅沢な装飾が至る所で見受けられ、この家の豪華さが伺えた。
「…坊ちゃま、本当にお一人でイギリスに行かれるおつもりですか?」
「うん。会いたい人がいるんだ。どうしても。約束を守る為に。
今イギリスにいなかったにしてもアテはあるからね。必ず見つけだすよ。」
スニーカーの靴紐を結びながら、楽しそうにそう言った少年はこの春、高校生になる。
高校生と呼ぶには幼すぎる顔に、この歳の平均を上回る身長は少々不釣り合いに思えたが、バランスの取れたその出で立ちは、おかしな所はなかった。
むしろ、惚れ惚れする程整っているようにみえた。
英国の血が4分の1流れているとゆうこともあって、吸い付くような艶やかな、透けるように白い肌をしており、女性ならその色艶だけで立派に色気だったものになりそうなブロンドの髪を持っていた。
極めつけは宝石と見紛うほどに美しいエメラルドグリーンの眼だった。
そんな彼の名前は朔夜・コストナー。
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