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「……」
なにも言わず、フェリルもソウルを抱きしめた。
きっと彼女の心の中も、ソウルと同じなのだろう。
最愛の人が馬鹿にされるのをじっと見ていることなど、出来るはずがないのだ。
「こんなところ、来るんじゃなかったな……」
「え?」
「久々に帰って来ても、いつもと同じ。分かってたんだけどな……」
悲しそうな表情を浮かべる。
期待していたのかも知れない。
心配してくれているのではないか?普通に、お帰り、と声をかけてくれるのではないか、と。
しかし、現実はそうではなかった。帰って来て言われるのは、「生きていたのか」という言葉。
少しだけでも期待していた自分が馬鹿だ。そんなこと、ありえないのに……。
「たまには、帰ってこないとさ。口ではあんなこと言ってたけど、心の中では心配してるかもしれないし……」
フェリルはそう言うも、フェリル自身、そんなことはないだろうと思っていた。
「いいんだ」
「え?」
「お前さえいてくれれば、家族なんて……」
そう言い、フェリルが何か言おうとしたが、ソウルが先に口を開いた。
「さぁ、今日はもう寝よう。明日から学園だしな」
何か言いたげな顔をしたフェリルだったが、ソウルの言葉に頷くだけだった。
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