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「「……」」
声を発することが出来なかった。
魔力がない。それはつまり、『落ちこぼれ』だということだ。
成長すれば、魔力の総量は増えるが、それでも生まれた時の魔力の量が、その後の人生を決めると言っても過言ではない。
「に、兄さん……」
かける声が見当たらないとはこのことだ。
自分の息子、しかも、今後歴史の長い『アルクス家』を背負っていく息子が『落ちこぼれ』だったのだ。
落ち込む所の話ではない。
「…まだだ」
「え?」
「…まだレンリエッタがいる」
確かにレンリエッタはまだ計っていない。
それに、家を女が継いではいけないという決まりはない。前例がないだけだ。
まるで何かに取り付かれたかのように、石を持ちフラフラとレンリエッタに近づいた。
そして、その手に石を持たせた。
すると。
見る見るうちに石は赤く濃く変色していく。
少し経ち、石をレンリエッタの手から取り上げ、まじまじと見る。
「フフフ……」
ラウルが気味の悪い声を出す。
「に、兄さん……?」
「フフ、アーハッハッハッハ!!!」
――石の色は、黒なのではないかと思うほどの濃い濃い赤色だった。
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