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ラルクは「魔法が出来ないのなら、せめて剣術を」と、ソウルに剣術を教えた。
見る見る上達していた頃。
運命の日を迎えた。
10才の誕生日だった。
――――――――――
誕生日。
本当なら、親が盛大に祝ってくれる日だ。
当然、アルクス家でも準備が進められていた。
しかし
盛大に掲げられているテロップには
『レンリエッタ誕生日おめでとう』
の文字が。
ソウルなど、完全に忘れられているのだ。
いや、忘れているわけではない。
『故意』に書いていないだけである。
しかしソウルは、もうこんなことは慣れていた。
生まれてこの方、本当の両親に、誕生日を祝ってもらったことなどないのだから。
部屋にいつものように「叔父さんのところへ行く」という置き手紙を残し、部屋を出る。
扉からではなく、窓から。
手摺りに掛けられているロープを掴み、いつものように下へ降りていく。
しかし、今日は何かが違った。
(あれ?何だか身体が軽い……。)
何時もなら、ずり落ちないように必死なのに、何故か今日はスルスル降りることが出来た。
(うん、やっぱり軽い。走るのも、いつもより楽だ。)
少し考えたが、理由なんて分かるわけもなく、体力でも付いたのだろう、と解釈し、考えるのをやめ、叔父さんの家に向かった。
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