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ラルクの家は、ソウル達の住む家の近くだった。走れば5分の道のりだ。
しかし、やはり今日は何かが違うようだ。いつもなら5分かかる道のりを、3分足らずで完走してしまった。
「こんにちわ! 父さん! 今日も来ちゃった!」
玄関の扉を開け、元気よく挨拶する。
叔父であるラルクを『父さん』と呼んでいるのは、ラルクを本当の父のように思っているからだ。
本当の父親は、今頃ワイングラス片手に社交辞令でも述べているんだろう。
「おお、来たかソウル! 誕生日おめでとう! さぁ、中へお入り。俺が手によりをかけてご馳走を作ったんだ」
ラルクは、今日、ソウルの誕生日であることを覚えていた。隣であれだけ盛大にパーティーを開く準備をしていたのだから、嫌々でも気付くだろうが。
「それよりさ!」
玄関の隅に立て掛けられている木刀を手に取り、
「先に稽古してくれない? 今日は父さんから一本取れる気がするんだ!」
「おいおい、何時も取れる取れると言って、取れていないくせに……」
ラルクはため息をついた。
「ま、飯前の軽い運動だな!やるぞ、ソウル!」
「うん!」
ソウルは思っていた。
こんなに身体が軽いなら、ラルクから一本取るのはたやすいのではないか……と。
そして、もし取れたら、このことをラルクに聞いてみよう、と。
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