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まぁ橙舜も、媚びへつらう爺どもが好きな訳もないので、屋敷に被害が及ばない限り放っておくのだから同罪かもしれない。
橙舜はふと扉に視線を移した。
「ところで、懍は?」
開けっ放しの扉から続く長い回廊にはひとの気配はない。
面倒見のよい彼女が預かり物(カナン)から離れるなんて珍しいを通り越して心配になる。
「きゅんちゃん連れてどっか行っちゃったの。とーしゅんさまのとこにいってなさいって」
きゅんちゃんとは懍の相棒ともいえる化け猫のことだ。
ということは、おそらく今頃は懍や里眞が止めに入っているだろう。ご苦労なことだ。
その女性陣の苦労を偲んで、橙舜はしばし子守をかって出てやるのだった。
「そう。じゃお茶にしようか?」
桃のお茶と美味しいお菓子があるんだよ、というと少女は歓声をあげた。
その様子に小首を傾げて微笑むと、窓から差しこむ日の光に彼の瞳とおなじ翡翠の耳飾りが煌めいた。
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