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「くっ、邪魔が入ったみたいね」
墓石の閃光が衰えた頃、俺の中で除外されかけていた死神が姿を現した。手にはしっかり大鎌が握られている。
「お話はまた今度ね。今は誠悟を守るのが先決」
そう言って彼女は死神の方に視線をやる。まさか戦うつもりなのか。
「肉体の概念がない貴女に用はない。私の妨げになるのならば消してあげるわ」
「誠悟の敵は私の敵。死の使い魔の貴女に誠悟の命は渡さないんだから」
何を始めるつもりだお二人さん?俺は二人の半径十メートル以内にいてはならないと悟り、静かに退場した。
「容赦はしないわ。ポルターガイスト!」
そう彼女が言ったと同時に、俺の身の回りに立っていた墓石が震え出す。そして宙に舞い始めたから仰天だ。物理学の専門家がこの光景を目の当たりにしたら絶句だろう。
「流石は幽霊、心霊現象はおてのものね」
これに対し死神は驚く気配もない。それに幽霊だと。まさか彼女のことを言ってんじゃないだろうな。
「飛んでけー」
彼女が指を死神に向けた途端に浮遊している墓石の集団が一斉に死神目掛けて飛んでいく。
よくよく考えれば、たしかに彼女は幽霊に近い存在、もしくはその通りなのかもしれない。先程ポルターガイストと叫んでいたし、少し透けて見えるというのも見間違いではなさそうだ。
この時だ。俺は無意識ながらも幽霊の存在を肯定してしまったのだ。ていうか否定する方法がないのだから仕方ない。現に目の前にいる奴を否定するなんて無理難題だろ。
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