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「そんなもので」
襲い掛かる墓石を容易に鎌で薙ぎ払う死神。行動ひとつひとつに無駄がない。
「今度はこっちの番。その可愛いお顔を赤く染めてあげるわ」
死神が鎌を構えながら翼を広げて幽霊の彼女を襲う。黒い翼からは邪悪なオーラが伝わってくるのが遠くにいる俺にもわかる。
「そう易々と!」
途端に幽霊は姿を消した。どこに行ったんだ?
「何?どこに消えた?」
死神もうろたえている。だが幽霊はすぐに姿を現した。
「捕まえたわ!」
背後だ。死神の背後を奪い、触手のような物で死神を捕らえている。
「ええい。小癪な!」
死神は身動きを封じられたようだ。嫌がる仕草をしているのが見える。
「何をしたんだ?」
質問をしていた。言うつもりはなかったのに勝手に口走ってしまった。
「これは悪霊をロープ状にした物よ。これに巻き付かれると金縛り状態になるの」
ちゃんと幽霊少女は答えてくれた。ふむ、俗にいう金縛りとはこれが原因で起こるのか……などど関心してる場合じゃないな。
この場合。なんとしてでも幽霊少女に勝ってもらわなければ、俺は鎌の錆にされる。じゃあ俺が彼女のためにしてやれることはないのか?
ない。多分あるのかもしれないが思いつかない。だって相手が幽霊と死神だぞ。常人離れしたあいつらの激闘に何の能力も持ち合わせていない一般人が手出しする必要なんてあるか?ないだろ。男として情けない限りだが、自分は大人しく蚊帳の外から傍観者としてあるべき存在なのだ。おそらく俺と同じ境遇に陥ることがあれば、誰しもがそう思うだろう。
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