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「こんなもの!」
視線を二人に戻すと、死神が悪霊の呪縛を振り払っていた場面だった。殺気が何倍にも増して感じられる。
「貴女と遊んでる暇はないの。本気でいかせてもらう!」
純粋なルビーのような死神の真っ赤な目が見開かれ、険悪な表情で幽霊少女を睨んでいる。やばいめっちゃ怖い。
「真っ二つにしてあげるわ!」
両手で大鎌を振り回し、黒い波動を絶え間無く放出している死神に対し、幽霊は若干押され気味でいる。
「なんて邪悪な力なの。これが死神の持つ負の効力なのね」
やたらと専門用語を出さんでくれ。その手の話題には如何せんついて行けそうにない。
「消えてしまえ!」
闇の衣を身に纏った死神は、トランス状態にでもなったかのように冷静さが失われていた。鹿を追う虎の如く幽霊を追い詰めていく。
そして次の瞬間、鎌は幽霊の白くて細い右腕に突き刺さっていた。視認不可能な速さで振り落とされた大鎌を自らの腕を盾にして防いだわけなんだが、理解したのは随分後になってからだ。
「おい!」
咄嗟に声をかける。幽霊少女の白い右腕を鮮血が赤く染め始めていた。
「大丈夫。このくらい平気だから。まだ戦える」
鎌から無理矢理引き抜いた細い腕を左手で庇いつつ、彼女は苦笑いを浮かべた。
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