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「あんまり手間をかけさせないでもらえる?私もそう暇ではないの」
惚けている場合ではない。死神の魔の手が迫っていた。何度も俺の首を取り損ねて不機嫌そうな顔してやがる。疲れたんなら帰ってくれよ。
「貴方なんかに誠悟をやらせない!元いた世界に帰りなさい!」
右腕を真っ赤にしながらも死神に立ち向かう幽霊少女。彼女の足元には小さい血溜まりが形作られていく。
「まだ盾突くつもり?貴方には用はないの。早々に立ち去りなさい」
鋭いが淡々とした口ぶりで話す死神。顔は断然良い方なのだが、人を見下すような目つきなのが正直マイナスなんだよな。もう少し愛嬌のある眼差しを心掛けて、って俺はこの期に及んで何考えているんだ?
地に両手を置いたまま死神を見上げて、再び愕然とする思いになる。
死神が鎌を振り上げていたが、そんなものは視界に映らなかった。問題は死神の向こう側、遥か上空を彩る紺の色彩に混じっている黒い不純物のほうだ。そこにある墜落船と相違点が皆無だと見えたのは俺の思い違いであったと信じたい。
「あれは、先程の異世界生命体が使用していた移動用兵器と同系統の火器戦艦。今度は艦隊でこちらに接近している」
どうやら死神の堅苦しい説明を確信せざるを得ない状況に陥ってしまったようだ。量産機なのかは知らないが、そこのポンコツになった軍艦と、現在こちらに急行中の約三隻が同じなのだということには非の打ち所がない。
全く、こんな小さい星にわざわざ旅行に来るなんて暇な連中だよ。
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