異世界からの黒船来航

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カップラーメンに沸騰仕立ての熱湯を注ぎ、指定された時刻をキッチリ守るほど時間に厳しくない俺だが、こうも一人で待ち合わせ場所に居座りまじまじと腕時計を気にするのはいかなるものか。 普段は何気なく見過ごしている図書館も、自分がいる場所となれば違った見方になるものだ。 そんな暇潰しにもならない独創ワールドを脳で描きつつ、いつも以上に回りに気配りをする一介のフリーターがいるわけだ。 何故普段ろくに読書など親しまない俺が図書館の前でふらついているのかというと、アレだよ友達待ち。 「曲星くーん!ごめん待たせちゃったね!」 そよ風と共に俺の珍妙な名字を呼び颯爽と現れた少女は、惑うことなく俺の待ち人だった。 「少し遅かったじゃないか。電話の一本くれれば迎えに行ったのに」 「私の為にそこまで迷惑かけられないわ。お詫びに後でジュース奢るよ」 彼女は山下春奈(やましたはるな)。中学の時の同級生で今は調理師になる為の専門高校に通っている。フリーターの俺と比べたら未来はあるわな。 ちなみに恋人という立場ではないからな。向こうもそこまで考えてるわけはない。いや絶対だ。 「じゃあ行くか」 「そうね」 俺達は近辺にそびえ立つ百貨店へ向けて足を進める。 視点を変えればデートにも見えるが、実質上俺は春奈の付添人みたいな配役だ。お帰りの際は山積みになった買い物袋の世話をする羽目になってるだろうな。 哀れな視線をよこさないでくれ。これがフリーター生活を営む俺流の休息なんだからよ。
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