異世界からの黒船来航

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「貴方は先程、この艦にいる異世界生命体から逃れたいと願望を抱いた。そしてこの密室かつ適度に汚れた空間に百人で囲まれている。これが我々死神を呼び出すサイン。必然的に貴方は依頼主となり契約はなされたのです」 いや偶然だろ。そんな理不尽な死神法則を人間に押し付けて平気な法律などあってたまるか。 「これは我らの首相が作られた絶対法則です。人間であろうとも則ってもらいます」 だったらその首相とやらに、あんたが決めた理不尽法則について5W1Hで丹念に説明しろって問い詰めたいね。話してくれるんなら一時間でも十時間でも聞いてやるよ。 「契約がなされた時、死神は依頼主の実行可能な願望に従い動きます。不可能な願望についてはその場で契約は破棄され、依頼主を除く我々を見た百人の記憶は抹消されます。依頼主にあたってはこちらの事情により記憶を奪いませんが」 確かに筋は通っている話だが……と、実行不可能な願望というのはおそらく世界が滅亡したら良いというような死神自身も被害者となりうる状況を引き起こす内容だろうな。それはさておき、 「なら俺が抱いた願望ってのは実行可能というわけか?」 「ええ。そして遂行されました。すでにこの艦は貴方達人間を除いてもぬけの殻です」 そりゃ随分と仕事が早いんだな死神は。俺もこのくらい仕事熱心ならバイトの給料も値上がりするかもな。 ちなみに春奈は俺の隣りで固まっている。そして他の人々も。そりゃあんな殺気を放つ奇怪な奴が現れて平然としてられる人間など大概いないだろう。ならそいつと会話している俺はどうかしてるんだな。
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