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「しかしまだ利害は一致していません。契約にあたって依頼主は死神に代価を払うのが道理です」
そんな道理など知らん。そもそも押し売り業者みたいなことをしといて勝手に話を進めるほうが道理に反してるんじゃないのか。
「たく、じゃあ何が望みなんだよ死神さん?」
とりあえず向こうの意見に耳を傾けてやろうと尋ねたが、まさかの返答に声が詰まった。
「無論、依頼主の魂。貴方の命をもらいます」
流石に絶句だよ。もう頭の中や目の前が真っ白になって、恐怖と絶望だけに染まっていく自分を理解することに精一杯だ。
「ではもらい受けます。大丈夫、すぐに終わりますから」
死神が鎌を振り上げる。逃げたくても足が硬直して微動だにしない。くそどうすりゃいいんだ……ってそんなことを考えてる暇もない。
鎌が俺に降り懸かる。恐怖感を劣化させるために瞼を閉じた。暗黒の中で俺は鎌が来るのを否応なしに待たされる、
その時。
トラックの接触事故、いや飛行機の墜落音と共に空間が揺れた。突然の事態に床に仰向けでひっくり返る俺に死神の鎌は降らなかった。
「くっ、そういえば操縦者がいない戦艦だったことを忘れていた。これは私の誤算…」
瞼を開くと尻餅をついて度肝を抜かれている死神がいた。パイロットを失った戦艦は当然の如く墜落したのだ。
「今だ!」
柔らかくなった足と頭で俺は隣にいた春奈の腕を掴み走り出した。
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