正体

3/6
前へ
/123ページ
次へ
「何か冷やすもの…!」 あいにく近くに水の音も しない。 熱をとるものは何か ないだろうか… (すごい汗…) クロさんは額にすごい 汗を浮かばせている。 相当熱が高いのだろう。 (帽子…脱いだら少しは涼しいかな…) 黒のニット帽をかぶっている。 帽子をとろうと手をのばすが 「これは…駄目だ…」 クロさんが目をつぶった まま私の腕をつかんだ。 「でも…」 「…頼む」 急に、クロさんが愛しく 思えた。 あんなに大人っぽかった クロさんがとても弱々しく 見えた。 (ずっと…見守っていてくれたんだろうな…) 私が目隠しをしている間、 見張りをしていてくれたに 違いない。 (クロさん…)
/123ページ

最初のコメントを投稿しよう!

88人が本棚に入れています
本棚に追加