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貴方が私の手を強く握り
病院の庭に連れ出してくれる
貴方の広くて大きい背中を見ながら
私は溜め息をつく
貴方が幸せそうに見えるから
こんなこと言い出せない
私の病気のこと
治る見込みのない病気のこと
貴方は知らない
私がいつか必ず治ると思っている
でも貴方の笑顔と心を曇らせたくない
私は怖いんだ
真実を受け入れるのが
彼が毎日、見舞いに来てくれるのに
だって病気のことを貴方に告げたら
貴方は私のもとから去ってしまうかもしれない
貴方無しでは生きていけないのに
笑うこともできないのに
貴方を信じてあげられない
私はどうすればいい
貴方とベンチに座る
私が話そうとする前に
貴方は私を愛してるって
絶対に逃げないって
君と一緒に戦うって
そう言ってくれたの
涙が止まらなかった
貴方を信じてあげられなかった自分を憎んだ
情けなかった
胸が張り裂けそうだった
声を出して泣く私を抱き寄せて
優しく頭を撫でてくれた
大丈夫だよって
一人で戦って偉いねって
でもこれからは俺も一緒に戦わせてって
君の支えになるからって
心の鎖が解き放たれた
涙が止まらなかった
自分の情けなさからくる涙じゃなかった
感謝と愛情の涙だった
目が腫れていた
貴方は抱き合ったまま
小さな寝息をたてていた
毎日の看病に貴方も疲れていたのね
ありがとう
こんな自分勝手な女のために
ありがとう
私は貴方の頭を膝にのせ
彼が起きるまで頭を撫でていた
私は病気で
情けなくて
自分勝手
それでも貴方は
私を愛してくれた
だからね
私決めた
貴方の傍に一生いるって
絶対に逃げないって
決意の心を寝ている貴方に伝えるために
私は貴方にキスをした
貴方はおきなかった
安らかな寝顔
笑っているようにみえる
どんな夢をみているのかな
この寝顔をずっと見ていたいって思った
夕焼けの空には星がちらつき始めていた
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