-第4章-

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『まぁ君、お久しぶりね。大きくなったわねぇ。すっかり男らしくなったわ。実さんに似てきたんじゃないかしら。』 色白で今にも倒れてしまいそうな見た目とは裏腹に、ひろねはハキハキした声で言った。 『あ、いぇ、はぃ。どうもっす。ははは。』 真広は照れながら笑って答えた。 昔、県内美男子コンテストで優勝した実の息子であることを誇りに思っていた真広は、“父に似ている”と言われることが何より嬉しかった。 『真広、どうもっすじゃないでしょ。ちゃんとお礼言いなさい、もう…ごめんなさいね。コトちゃんもとてもキレイになったじゃない。本当に可愛らしくて羨ましいわ。いつもうちの真広と仲良くしてくれてありがとね。』 『あ、ぃえ。私こそ真広君には日頃から助けていただいてるんです。私がお礼を言わなきゃいけない立場ですわ、さつきおばさん。』 頬を少し赤く染めた琴音が片手で髪をかきあげながら言うと、真広の表情が変わった。 『なんだ琴音ーそんな風に思ってくれてたんだ。まぁこんな美男子で優しいやついないからなぁ、見る目あるな、あはは。』 『ちょっと、真広!…まったく、もぅ。ごめんなさいね。コトちゃんはこんなしっかりしてるのに、うちの子は…。お恥ずかしいわ。』 『あははは、いいじゃないですか、奥さん。男の子は元気が一番だよ。ねぇ、真広君。』 誠は白髪交じりの頭を触りながらさつきに言ったかと思うと、もうすぐ始まる選挙について実に語り始めた。 二人は政治や歴史の話題になると盛り上がり、話尽きる事はなかった。 車は高速道路を走り始めていた。高級リムジンに装備されたナビは一つも狂いなく道案内をしていた。 久しぶりの早起きに、真広と琴音は深い眠りにつき、車内には低い声だけが響いていた。 『今の日本の政治家の力ではアメリカに対して影響力も与えられないですからな。』 『まったく、五条さんの言うとおりですね。私も残念で仕方ない。そのうち日本の財政は底を尽き、どこからも相手にされなくなってしまいますなぁ。』 そんな会話が繰り広げられる中、ただ一人熟睡できず考え込んでいるひろねがいた。
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