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(ついに今年が来た。あれから何年待ったのだろう。やっと、やっと…)
『ひろねさん?どうなさったの??』
さつきの声にひろねは現実に戻された。
『あ、ごめんなさい。ちょっとボーっとしてたわ。』
『いえ、それなら良かったわ。着いたわよ。』
何時間経ったのだろう。車はあっと言う間にスキー場の前に止まり、執事や雇い人達が準備を始めていた。
『あら、もう着いたのね。今年も雪が多いわ。楽しみね。』
ひろねは視線を窓の外に向けながらつぶやくように言い、そのひろねの言葉に、真広はどこか冷たさを感じていた。。。
(ひろねおばちゃんどうしたんだろ。なんかあったのかな。淋しそうだな。)
既に待機していた雫石家の執事桜木と五条家の執事高橋がドアを開け、6人は一年ぶりに新潟の土を踏んだ。
『わぁーきれぃ!真っ白だわ。真広君、見てみて♪』
『あーホントだな(笑)琴音小学生みたい。』
『雪だるま作ろうよ。』
『まじかょ?俺ら高校生になったんだぞ。』
真広はそう言いながらも雪だるまを作り始めていた。
琴音の言葉は幼いのだが、どこか人を説得させる力を持っていた。
真広はそんな琴音が好きだった。
それが、恋なのか恋じゃないのかは真広にも分からなかった。
実と誠はさっそくスキー板に履き替え上級者コースに向かい、さつきは中級者コースへ、ひろねは少し部屋で休んでからと言いスキー道具一式を抱え込んだ。
『あら、ひろねさん具合でも悪いの?珍しいじゃない。』
『ぃぃぇ、平気ですゎ。あまり車で眠れなかったから。でも少し休んだらすぐ追いかけますゎ。』
さつきは心配そうにひろねに頷くと、中級コースリフト乗り場へ滑り出した。
『2人とも、滑るときは中級より上は行ったら危ないですからね。』
『はい、お母様。しばらくしたら私達も中級に向かうわ。』
笑顔で頷き、部屋に戻って行くひろねの後ろ姿を、真広はやはり不思議と冷たく感じた。
(やっぱおばちゃん変だな。なんだろな。)
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