-第4章-

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その夜、国内でも数少ない、外国人のみが経営するホテル《ル・スヴァワレ》の最上階の一室に、フランス料理が運ばれてきた。 前菜のトマトと人参のムースが淡いピンク色のテーブルクロスの上に並べられると同時に、フランス・イタリア・日本など世界中で修行をつみ、世界で指三本にはいると言われているシェフが部屋に入ってきた。 『ドゥモ、シズクイシサン!キョウハオマネキアリガトゴザイマス!タイヘンウレシクオモイマス!』 耳が痛くなるほどの大きな声と外人特有のなまりで話しかけてきたハヴォンネは誠の手を握って肩に手を回し、ひろねの頬にキス、琴音を思い切り抱きしめた。 ハヴォンネは、全国を周る中で日本を最も気に入り、今は銀座にあるレストラン《ラ・リーズ・ドゥ・ヴァレ》で腕を振るっている。 顔馴染みの雫石家に頼まれ新潟にある姉妹店に足を運んで来てくれていたのだ。 『ミスターハヴォンネ。今日は忙しい中来てくれて有難う。』 『ワタシモシズクイシサイトオアイデキルノハマイカイタノシミニシテルンデス、サアメシアガテクダサイ』 6人は用意された円卓を囲み、手慣れた手つきで食べ始めた。 前菜の後はソラマメスープ、トリュフが乗った魚のソテー、デザートにはキャラメルバニラアイスクリームというコースであった。食事が終わると、雫石家と五条家はそれぞれの部屋に別れた。 その時、真広は両親達にバレないよう琴音の耳元で囁いた。 [重要な話がある。夜中部屋を抜け出してきてくれ。]
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