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琴音は眠ろうにも眠れなかった。
[重要な話がある。夜中部屋を抜け出してきてくれ。]
(真広君、急にどうしたのかなぁ。重要な話って、いったい何があったんだろう。なんか怖いな。)
ベッドに 横になりながら時計の針が進むのをただひたすら待った。
(夜中て何時かな。)
ブーッ ブーッ ブーッ
携帯のマナーが鳴り、琴音は慌てて取り上げ隣を見渡した。
誠とひろねは物音一つたてず熟睡している。
(よかった。起きてない。こんな時間に誰かな。)
琴音は出来る限り静かに携帯を開いた。
✉【起きてるか?俺部屋の前にいるから抜け出せるとき来いよ。琴音寝てそうだなぁ(笑)】
ガチャッ
真広は半分眠りかけていたが、ドアが開く音で目を覚ました。
『ぉぉ、来てくれたか。』
『シ~ッ。お父様達が起きちゃうわ。』
『あぁ、ごめん。さて、とりあえず行くか。』
真広は声のトーンを落とすと立ち上がった。
『え?行くってどこへ?』
琴音の問いに答えることなく真広は琴音の手をつかみ歩き出した。
『ちょっ…真広君?』
『良いから。付いて来い。』
2人はエレベーターで一階へ降り、ロビーの一番端にあるソファーへ腰掛けた。
そこは暗い電気が灯され、フロントやエレベーターから死角になっていた。
『琴音、夜中にごめんな。でも重要な事なんだ。聞いて欲しい。』
いつになく真剣な眼差しに、琴音は頷く事しか出来なかった。
真広は両膝に自分の両肘を付き、顎を手のひらで支える格好になると、さらに厳しい表情を浮かべ、重い口を開いた。
『俺、見たんだ…』
『な、なにを?』
『…うん。信じてもらえるか分からないんだけど。』
真広は琴音から視線を逸らしつばを飲み込むと話し始めた。
『俺、ご飯の途中トイレに行ったろ?そん時ハヴォンネさんだっけ?あのフランス人の後ろ姿が見えて先にトイレ入ってったんだ。挨拶しないとって思いながらトイレ入ろうとしたら、奥から女の声がしたんだ。男子トイレだぜ?俺はなんとなく隠れながら中を覗いたんだ。』
真広は一呼吸置くと、更に小さな声で言った。
『…そしたらさ、そこにひろねおばちゃんがいたんだよ。』
『…え?お母様が?でもお母様はトイレに行ってないわ。』
『だろ?俺だって自分がトイレにたった時にひろねおばちゃんはテーブルにいたはずだから何がなんだか分からなくてさ。』
『…どうゆうこと?見間違えじゃない?』
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