-第4章-

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『俺もそう思った。だから思い切って中に入ったんだ。そこにいるのは紛れもなくひろねおばちゃんで、「なんでおばちゃんが?」って聞いたんだ。そしたらおばちゃんとハヴォンネさんは俺を押さえつけて、おばちゃんが「私の目を見なさい」って言ってきたんだ。俺はとっさに目じゃなく瞼をみたんだ。そしたら目の前がピカッて光って俺は倒れ込んだんだよ。目をつぶって倒れてたんだけど、何故か耳は聞こえてて、おばちゃんがハヴォンネさんに「これで記憶は消えたわ。私は戻るわね。」と言うのが聞こえて、その直後目を開けたら、そこにはハヴォンネさん一人しか姿が見えなかったんだ。ハヴォンネさんは俺に「ヤアゴジョウサン。ディナーハタノシンデモラエタカナ」って何事もなかったかのように話しかけてきたんだ。俺はとっさに「とても美味しくいただいてます」って対応したんだけど、ひろねおばちゃんの言葉通りには記憶は消えてなくて、俺は訳が分からないままテーブルに戻ったんだ。そしたらそこには当たり前のようにひろねおばちゃんがいた。』 真広は一気に話すと、荒い呼吸を整えるため数秒の沈黙があった。 琴音の頭の中は混乱していた。 真広は嘘を付く人ではない。 でもひろねは確かに自分の隣に座り、美味しそうにデザートを口に運んでいたはずだった。 『琴音が信じてくれるかは分からない。ただ俺がみた全てを話した。琴音には話したかった。じつは…最近俺の父親もおかしいんだ。だから気になってさ。いきなりごめんな。』 『ぅぅん、大丈夫よ。でも、分からない。真広君はうそ付くような人じゃない。でもお母様は隣にいたし…』 琴音は流れそうになる涙を必死にこらえた。 数分の沈黙が流れた…。 それは二人にとって数時間にも感じられる沈黙であった。 『…琴音、混乱させてごめん。。。』 『ううん、私こそごめんね。せっかく話してくれたのに。』 『いや、良いんだ。こんな話、普通誰も信じないだろーしな。聞いてくれてありがとな。さて、もうそろそろ戻るか。琴音、疲れたろ?』 時計の針はすでに三時を指していた。 2人はソファーを立ち上がりエレベーターに向かった。 すると2人の前に1人の男が立っていた。
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