-第5章-

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【京都府医大付属病院】の救急に運び込まれた実は点滴を打たれていた。 …コンッコンッ ガチャ 『やぁ、失礼するよ。わい、グツはどへん?(僕、具合はどうだ?)』 幸い、実は意識を取り戻し命には何の別状もなかった。 『あ、どうもおおきに。』 京都なまりの優しい声と、にこやかな笑顔で話しかけてきた五十歳前後に見える男性は実のベット脇まで近寄ってきた。 その人が身に纏っている(まとっている)真っ白な白衣の胸元には雫石優(しずくいしゆう)と書かれていた。 『わい、名前はなんとゆーんだい?』 『……五条実どす。』 『実くん。ふむ。…実くんはいくつかいな?』 『17…あ、いや、18どす。』 一週間前、家を飛び出したあの夜、誕生日を迎えたのをすっかり忘れていた。 (最悪の誕生日やったなぁ。) 『そぅかぁ。高校生やな。どへんして公園にシトリ(一人)でいたのかいな?』 『……』 実は黙り込んでしまった。 (オトンとオカンが借金に追われて俺を見捨てたんや…なんて言えへんなぁ) 『覚えてないんどす。』 実は嘘を付いた。 それを聞くと、雫石優はただ黙って、白衣のポケットからミルク飴を取り出し、実の手に握らせた。 『あんたに会いたがっとる人が良るんだ。』 『…え?』
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