-第6章-

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五条さつきが疑問を持ち始めてから半年が経とうとしていた。 『おはよう、お母さん。』 『あら、おはよ。今日も早いのね。』 『え、あぁ、うん。まあ…』 真広は日曜日だと言うのに朝の8時にリビングに顔を出す。 それはちょうど半年前からだ。 毎年行くスキー旅行。 しかし、半年前はいつもと違っていた。 さつきは、毎朝息子の顔を見る度に思い出していた。 まずは、雫石ひろね。 彼女はスキーが大好きでそれまではスキー場に着くなり一番に滑り始め、最後まで戻ってこなかった程だった。 なのに、半年前だけは違った。 身体を休めるからと言ってホテルに戻り、数時間後やっと来たかと思うと数時間ですぐ切り上げてしまった。 次の日も、また次の日も、積極的に滑る事はなかった。 次に、雫石誠。 彼は、私と二人きりになるといきなり聞いてきた。 『実さんは昔、京都にいませんでしたか。』 『…え?うちの旦那が?うちの旦那は生まれも育ちも東京ですけど?』 そう言うと誠はそうですか、と残念そうに言ったのだ。 あきらかにいつもと様子が違っていた。 それに、実の事なのに何故私に聞いたのだろう。 そして、五条実。 実はあのスキー旅行中の夜中、毎晩隣のベッドでうなされていた。 『…オトン…オカン。』 うなされる度、なまり言葉でそう言った。 それを聞いた時は、どんな夢を見てるんだかと吹き出してしまったが、のちのち考えると、あれは京都弁だった。 誠が言っていた言葉が何か意味を持つのではないかと不思議に思った。 実は絶対私を裏切らない。 心から私を愛してくれる。 でも、何故か実の小さい頃を知らなかった。 みんな一体何があったの? さつきは分からなかった。
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