-第6章-

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『お母さん?』 その言葉で現実に戻された。 そこには半年前とはあきらかに変わってしまった息子がいた。 “お母さん”と呼ばれていたのは真広が中学一年生までだった。 …はずだった。 『お母さん、大丈夫?具合悪い?僕が朝ご飯作ろうか?』 真広からお母さんと呼ばれる度、頭痛がした。 いったいこの子になにがあったの? 『大丈夫よ、気にしないで。』 決して、真広が不良になった訳ではない。 引きこもりになった訳でもない。 部屋の片づけやゴミ出しなど色々手伝うようになった。 そう、むしろ良い子になったのだ。 でも、違う。 真広じゃない。 この子は真広じゃない。 そう思ってしまう自分に腹が立ち、悲しくなる。 『…それにしても今日も早起きね。コトちゃんと遊ぶの?』 真広は一生懸命笑顔を作り頷く。 その笑顔は昔の真広の物ではない。 どこかが違う。 一体、何が?
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