-第6章-

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『お母さん、行ってくるね。』 そう言って出て行く真広を見送ると、実が寝室から降りてきた。 『おはよう。さつき、体調は大丈夫か?』 『えぇ、たいしたことないわ。』 いつもの決まった会話である。 真広がおかしくなってから、食べ物がのどを通らず、さつきは五キロ以上痩せていた。 実は朝目覚めると、いつも決まってさつきの体調を気遣い、さつきは決まって強がりを見せていた。 しかし、その日、さつきはついに弱音を吐いた。 『大丈夫じゃないわ。』 その言葉に実は反応した。 『あなたに、ちょっと話があるんだけど。』 実は新聞を机に置くと、まるで覚悟をしたかのようにさつきの顔を見つめた。 その真剣な眼差しに、さつきは泣きそうになる。 でも、泣いてはいられない。 -しばらくの沈黙- そして意を決したさつきは、ついに沈黙を破った。
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